店主日誌
2007年
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3/31(土)

   桜は見ごろ、店の一軒置いたとなりの石屋さんの『桜の園』では見事に咲いた大きな桜の花の下で、作業員の人たちがにぎやかにお花見をしている。

 29日、浅野祥君がビクターからのCD発売記念First Liveを渋谷DUOで行った。三味線かとう全員で駆けつけた。演出はWAHAHA本舗の喰始。ラストのじょんから節はさすがに鳥肌が立った。周りの人たちの一杯の愛情に包まれて、真直ぐにここまで育った祥クン。今、その温かい巣を飛び立つ、まさにその瞬間に立ち会った、とそのじょんから節を聞きながら思った。

3/26(月)

   さっき、オーストラリアのメルボルンに住むお客様から電話があった。2週間くらい前にはサンフランシスコから、国際電話なんて高いから早く切ってと思い、突然早口になる現代貧乏性の気の小さい私。 

  朝の英語はどこまで行ったっけ? そうお客様が来て、歓迎のごあいさつをして自己紹介、座っていただいたら、どこの国からいらしたのですか? そんなやり取りの後でした。

  Do you play shamisen? と言ったら、答えは Yes I do. か No I don't. と来るだろう。Yes と来たら、しめこのウサギ。すかさず、Please play the shamisen. だぜ。果たして彼(She?)は弾いてくれるでしょうか?こんなことをみんなで楽しんで、毎朝ひとつずつやっている。

3/25(日)

  昨夜、10年ぶり位になるのか、1人の親友と池袋で飲んだ。あまりにも嬉しすぎて飲みすぎた。今朝になって、2件目に行った店では、飲んだものはあれとこれ、食べたものはあれとこれ、入った店はこんなところと説明されたが、2件目に行った事さえまるっきり覚えていなかった。それくらい飲んだ。その割には今朝、しゃきっとしていたのは、昨日の酒は質が良かったということか。

 その旧友は、昔、私の部屋に居候をしていたことがある。彼がアメリカ留学から帰ってきて東京の大学にいる時に、ちょっとしたことから知り合いになった。何よりもユーモアのセンスが抜群で、嫌なことでもからっとしたジョークにしてしまう。よく一緒に飲んでジャズを聴いたり、いやァだらしなく、よく遊んだ。全然、性格も違う二人だがとても気が合った。

 卒業後、彼はついに故郷の有田で生家の窯元を継ぐことを決心して帰郷した。だがその後、焼き物を作るよりも、持ち前の人の良さと語学力が買われ、有田を世界に紹介するナビゲーターとして、有田を代表する顔になって働いている。昨日も池袋のメトロポリタンプラザの日本伝統工芸展に代表兼、彼のオリジナル楽器、碗琴奏者としてソロ演奏を行った。それを見て帰りに嬉しくてしこたま飲んだというわけだ。彼らしい素朴でまったりした音はかつてのことを色々思い起こさせ、熱いものがこみ上げた。

  2ヶ月くらい前に彼から電話があり、作日のことを知った。近況として「年金生活にはまだ早いので、今は碗琴生活をしています。」

3/18(日)

 上妻宏光氏が、第21回ゴールドディスク大賞、純邦楽・アルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
 
   デビューアルバム「AGATSUMA」以来の快挙! おめでとう、上妻クン。

3/17(土)

 早朝、山口繁夫、山口真明両氏は岐阜で行うお客様の演奏会のお手伝いに出発した。夕方リハーサルがあり、今夜は岐阜泊で明日本番。音感の良い二人はどこへ行ってもお客様に喜んで頂いているようだ。

   夜、店のシャッターを閉めた瞬間、寒むっと思ったら首筋を冷たい風がぴゅーっと吹いた。見上げると強く落ちてくる風に混じって白く細かいのが・・・あぁ、雪だ! 右下のまつ毛にひんやり吹きつけた一粒の雪は、暫く会えなかった恋人に再会したような感激に似て・・・。急いでパソコンに戻り、ここまでを書き記した。そしてもう一度外に飛び出た時は、もうその雪混じりの風は止んでいて夜空を見上げ呆然とたたずむ。ほんの一瞬だったけど間違いなく雪、私にとっての初雪に妙に感動せり。

3/16(金)

  今朝、初雪が降ったそうだ。うっかり寝坊してゆき様にお会いできなかったけど、良かった良かった。

 英語はやってるヨ。一昨日(the day before yesterday)は、Where are you from? ときたもんさ。そして昨日は、I 'm from California さ。毎朝、全員に一文ずつ読誦させている。もちろん遊びだけどね。早く外国のお客さま(a visitor)が来ないかなァ。玄関に入ったとたんに全員で一斉に、「Nice to meet you!!」と大きな声でお迎えするんダ。びっくりするだろうなぁ。ムフフ、楽しみ楽しみ。 

3/10(土)

 東京大空襲で焼け出されて、一時互いに行方を失った両親が霞む硝煙の中で再開した時に、母は土の甕を一つだけ持って、ぼぉっと自分に向かって歩いてきたそうである。晩年に父から聞いた話だが、その甕の中に何が入っていたか聞くのを忘れていたことに今気が付いた。母からもその中身のことは聞かずじまいだった。たぶんしっかり者の母のことだから大事な証書でも入っていたのだろうか。それとも中身は空っぽだったのか今は聞く由も無し。ずっと後になって少年時代にその甕を見たことがある。茶色い甕で、黒くなぞった筆あとの良くある図柄の焼き物だ。その時は、赤い金魚が緑の水藻の下で涼しそうに泳いでいた。

3/9(金)

 昨日、ニッポン放送、『テリー伊藤のってけラジオ』の生放送に出演した。リポーターさんが来て、スタジオのテリーさんとの連携中継というのだが、当日までその詳細がわからない。1時間前くらいに簡単な打ち合わせがあり、じゃ、何をやろうかなんて感じでたまたま来ていた「柴田師匠」に急遽演奏してもらうことを決めて、M・山口はミキサーにへばりついてエフェクターやら、リズムボックスをコントロールすることに。

 3時10分を過ぎた頃、生本番開始。先ずリポーターさんが私に「エレキ三味線」を作った経緯、苦労話などを聞く一下りがあった後、いよいよ急ごしらえの津軽民謡メドレーが始まる。「土佐の砂山」を静かに弾き始め、リズムが入り「津軽甚句」、そしてだんだん早くなっていくテンポの中で「じょんがら」をカンペキに弾き切った約1分間。スタジオからも驚きの拍手、テリー伊藤さんも異様に興奮して「凄いですねェ、周りの音にぜんぜん負けていないし、音がとっても綺麗だ!」

 最後の締めはやはり小学1年生風の店主の一言、「エレキ三味線は、世界を仲良くさせる楽器でーす。」とスタジオにエコーがこだました。 

3/7(水)  昨日は、「Welcome to Shamisen Katoh.」。 そしてお客様がソファに座ったら、お次はやっぱり自己紹介でしょう。 My name is ・・・」。

 はるか中学1年生の昔、あの勉強机と真新しい英語の本を初めて開いた時の匂いを思い出すなァ。

3/5(月)

 『1日1語英語教室』、昨日は休みだったので今日は2回目。待てよ・・・大文字で始まってピリオドで終わるのは、これはもう立派な文ではないか。こうなると『1日1語・・・』と言うわけには行かないナァ。どうせなんちゃってなんだから、いっそのこと『英語をしゃべれネエト』にしちゃおうか。

 と言うことで今朝の始まりは、「How do you do.」

 冬の寒さは一度も感じなかったが春の頼りはやたらと多い。梅はとっくに散ってしまったし、越冬熊さんのあちこちでの出没、南極の氷解、早い桜、タンポポの開花、早かった春一番のあと、今日は突風吹きすさぶ春の嵐。風を真正面で受けると自転車が一歩も動かない。南極の氷が解けるのは春の便りとは言えないよナ。じゃ、何の便りだ。

3/3(土)

 外国からのお客様がたまに見えた時、ただ顔を見合わせて意味もなくニコニコしているのでは、折角遠路来て頂いたのに芸がない。それで今日から『1日1語英語教室』を始めよう!と言っても誰一人英語を話せる人間はいない。ぎょえエ〜〜〜? そこでどうする・・・・・? 誰でも知っているようで知らない言葉から。

 明日のために、その1― 「Nice to meet you.」

 やれやれ、いつまで続くかと言う向きもござるが。そこは軽薄で鳴る店主がやること、至って無責任。

3/2(金)

 先日、国土交通省発行のマガジン雑誌『ARA』の取材を受けた。北区の岩淵水門より荒川下流域で暮らす人々の生活ぶりを詳細に描いていて興味深い。その中の「荒川名物列伝」というスペースに取り上げられる。ここでもまた、店主は「三味線は決して古いものではなく、これからの楽器なのです。」と熱く語った。

3/1(木)  ああ、雪を見ることなくこのまま春か・・・異様な寂しさ。