店主日誌
2005年6月

6/19
(日)
 早朝、店のドアを開けるとムッとする匂いに鼻腔が圧迫される。昨夜のうちに今日から始まる謝恩セールに展示した沢山の三味線の生きている匂いだ。まるで今の今まで、生れたばかりの三味線達が宴会でも開いていたかのようで、ものすごく勢いがあり。ドアを暫くの間、開放して新鮮な空気を吸わせる。セール初日は毎回決まってここから始まる。
6/11
(金)

 当ホームページを作成して管理しているのは柴田満こと常磐津菊与志郎氏だが、彼も国立劇場や歌舞伎座などの大舞台の仕事が多くなってきた。このところサイトの細かい更新はもっぱら新人の倉橋勝が受け持っている。

 私の場合は1999年の暮れに生まれて初めてキーボードというものに人差し指を押し付けたのが始まりだからいかにこの手のものに弱いか知れるだろう。ホームページ開設以来、店主日誌の原稿を書くくらいで大部分は柴田氏にお願いしてきた。まだ若い二人は大学やなんかでコンピューターと遊んでいた経験が多いのでうちのホームページのシステム程度は精通している。私は毎日のように彼らから『知恵』を授かっている。毎日のホームページを少しでも見易くするためには何よりも知恵がいる。その知恵を借りながらそれぞれのページを少しずつ変えてみたがお客様の反応やいかに?

6/4
(土)
 5月は例年に無く涼しい日が続いたが、私共は慌しい日々に明け暮れた。

 山形、秋田へ私用で行った後、4日だけ弘前で津軽三味線大会に駆けつけた。15歳の浅野祥君が2連覇、恐るべし。その後、ず〜っと6月に行うセールの準備に追われている。その間に武道館の郷土民謡協会全国大会に出店、『和音』のサヨナラパーティあり、国本武春さんのアメリカからブルーグラスメンバーを呼んだ凱旋公演ツアー『ラストフロンティア』を見て、小学校の伝統職人教室の実演にも出掛けた。

 特筆すべきは10日ほど前から山口真明に皮張りを教えていることだ。以前から教えてくれと懇願されていたのだが、皮張りの技術を伝えるのは私にはしんどい作業だと思い込んでいたので延び延びになっていた。昔のような教え方でなく自分自身がなるべく楽に伝えられるように心がけている。

 M・山口にこれから張る皮を一枚一枚良く見させることから始めた。自分が15歳で初めて皮に触ったときのこと、作業場の匂い、毎朝の雑巾がけ、庭掃除、自分の部屋の火鉢、親方の奥さんの明るい笑い声、親方の恐ろしい怒鳴り声、いくらでも思い出すセンチメンタル。