店主日誌
2004年9月

9/15
(水)

  当店初の試み、三味線バンドコンテスト『東京バトル』が終了して1ヶ月が経過しようとしている。審査員の皆様、関係者各位の皆様、出演8バンドの皆様、大変お疲れ様でした。遠路はるばる有難うございました。
 
 ずいぶん前のことのようでもあるが、昨日のことのようでもある。記憶が薄れないうちに思い出せることを書き留めておこう。

 8月21日が近づいて来るにつれて舞台裏が大掛かりになっていった。当初予定に無かった前日仕込み、その夜最初のリハーサルはコンサートのクオリティを保つため必要に迫られたものだった。その甲斐あってか本番当日の朝イチから1バンド30分のリハーサルは快調に進む。あっという間に上妻宏光氏とそのバンドに移行してゆく。リハーサルの最後は全体の転換を中心にした通しリハ。私が今回最も留意した時間だ。メンバーの力を十分輝かせるには転換のこのつなぎの数分がコンサートの命運を分けると考え、音響、照明、舞台スタッフの総力を挙げてこの一点に集中した。演奏前の楽器通電チェック、モニターバランス、メンバー交代時の速やかな入れ替わりと楽器変換、マイク、音響機材やコード処理等など、出演者、スタッフ共に無駄な動きは許されない。


 本番は優秀なスタッフのお蔭で8バンドのプレイが快調に展開する。900人を超えた観客による「観客が選ぶナンバーワン賞」の集票作業はもう一つのクライマックス。お客さんは大多数の人が投票して下さった。そしてゲスト上妻宏光 with his Band の演奏後の大拍手のあと、審査を待つ間15分の休憩を取ったが帰る人は少なく結果発表を待った。

 『観客が選ぶナンバーワン賞』に「山影優 with Masaru friends?」が選ばれ、金一封を差し上げる。『準グランプリ』の発表を前にハプニングが起きた。審査員が一致して、用意していない『特別賞』を「サトウトヨand292」の皆さんにあげようと・・・。全く予期せぬことだったので何も賞品が無い。せめてということで斉藤ノブさんの音頭にお客さんのバクハツ拍手が盛り上がる。続いて『準グランプリ』は青森の「MOTO4」、賞品は夢絃21サイレンサー付(花梨)。そして会場が固唾を呑んだ次の瞬間、グランプリに上妻宏光氏より「異端侍!」の名が告げられた。賞品はエレクトリック三味線夢絃21(紅木)。

 初めての経験だが、コンテストの賞が決まるのはかけがえの無いスリリングな栄誉の誕生をもたらす瞬間であると同時に、ある痛みも伴うものだ。15分前、審査員室は緊張に包まれていた。次の用意がある為、その場に立ち会ったがどの審査員も真剣そのもの。もちろん私が意見を挟む立場ではない。緊張した議論の末、出された結果は尊いものだ。こういう時、主催者側からよく聞かされるが「全員になになに賞をあげたかった」、ちょっとだけわかる気がする。ちなみにワタクシ個人が好きな1曲は選に漏れた。

 毎年のようなまとめた夏休みは取れなかったが、翌22日の上妻宏光ワークショップの後、それでも3日間続けて店の休みを取ることが出来た。温泉に出かけたが最初は足の裏が痛く、その翌日はふくらはぎ、そして3日目は腿に上がって、帰ってきた時には殆ど回復した。温泉はいい。しかし回復力の遅さには我ながら情けなく・・・。

 昨日、やっとDATで録音した『東京バトル』の編集が終わる。月末には数社の雑誌から今回のコンサートの模様が批評と共に紹介されるので出演8バンドの皆さんに録音ディスクと一緒にお渡ししよう。

 先週の金曜日、この度のコンサートでひとかたならぬお世話になった荒川区地域振興公社のTさんが急逝した。全く信じられないこと。この企画を初めて持ち込んだ時から最後の打上げまで何から何まで熱心にご指導とご協力を頂いた。
 有難うございました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。