[東京バトルU]

『みんよう文化』10月号より 

『ミュージックトレード』10月号より


津軽三味線『東京バトルU』
若さあふれる舞台で観客魅了

 津軽三味線の若手4人の演奏家によるスーパーパフォーマンス「東京バトルU」(三味線かとう、荒川区地域振興公社主催)が8月26日、東京・荒川区のサンパール荒川で開かれた。

 出演は、全国大会一般A級最年少優勝と3連覇の記録をもつ16歳の浅野祥から最年長の小山豊が25歳という、若手バリバリの実力派4人。若さあふれる舞台と鍛えぬかれたテクニックを披露し、広い会場を埋め尽くしたファンを熱狂させた。

 第1部はそれぞれのユニットによるオリジナル曲の演奏。小山豊の「Soothe」が「草原」など3曲を披露。和太鼓とドラムに小山の太棹の響が絡む。続いて新田昌弘とクラシックギターのディーン・マグローのデュエット。リズミカルでノリのよい「ともだちのとり」、スローバラードで「母の子守唄」など3曲で観客を楽しませる。

 3番目に登場の「B-bloods」はエレクトーンに応援の尺八と和太鼓が加わり、浅野祥が高校生とは思えないテクニックと力強い撥さばきを披露し会場を沸かせた。締めくくりは東北仙台を中心に活躍する「閃雷MAX」。柴田雅人を中心とした津軽三味線と3種類の和太鼓のセッションでダイナミックな舞台を演出、客席から湧き起こった大きな手拍子で会場は最高の盛り上がりを見せた。

 第2部は各人のソロ演奏。浅野、小山、柴田、新田の順でそれぞれが鍛えぬかれた撥捌きを独奏で披露。最後に今公演の目玉「津軽三味線バトル」で4人がテクニックを競い合う。各大会優勝、優秀賞獲得の実力に裏打ちされた4人の豪華競演に会場の興奮は最高潮に達した。

『みんよう文化』10月号より

津軽三味線の競演 東京バトルU開催

 伝統的な三味線はもとより、近年はエレクトリック三味線『夢絃』の製造発売元として知られる三味線かとう(加藤金治社長)では、一九八九年の開業当初から三味線とその音楽の普及啓蒙を目指して、ミニコンサートを企画開催する『ちとしゃん亭』を主宰。第一線で活躍する演奏家を招いて店先で無料ライブを実施してきたが、それは既に三十回以上に及んでいる。

 更に本格的なホールを使ってのコンサートとしては、一九九〇年の日暮里サニーホールでの国本武春コンサートを機に、徐々に規模を拡大。それは一九九三年のちとしゃん亭特別企画の第一弾へと結び付いていく。これは津軽三味線全国大会のチャンピオンを招いてのコンサートで、以後毎回特色のある特別企画を実施して、三味線の演奏家はもちろん、一般の音楽ファンからも注目を集めている。そしてその第八弾として、『東京バトルU』が八月二十六日午後六時から、サンパール荒川大ホールで、三味線かとう、荒川区地域振興公社の主催、荒川区共催などで開催された。

 津軽三味線全国大会や津軽三味線コンクール等で優勝するなど将来を嘱望されている若き演奏家を招いたこのコンサートは、文字通り若いエネルギーが火花を散らすといった表現がピッタリの熱演が繰り広げられた。

 出演は新田昌弘、浅野祥、小山豊、柴田雅人の四氏。最年長でも小山豊さんの二十五歳、最年少は高校生の浅野祥さんと正にフレッシュな顔触れ。しかし若いと言っても、いずれも子どもの頃から修練してきた津軽三味線の強者。その演奏は聴衆を圧倒すると同時に魅了する。

 第一部のトップバッターは小山さん。ギター、ドラム、ベース、和太鼓という和洋のコラボレーション。次いで新田さんはアメリカ人アコースティックギタリストと共演、更に浅野さんはエレクトーン、尺八、和太鼓のユニット、柴田さんは二人の妹を加えた津軽三味線三人と組太鼓、大太鼓、桶太鼓二人という組み合わせ。それぞれ静と動、和と洋が際立っていて聴衆の耳目を離さない。

 会場は小学生の子供からシルバー世代まで幅広い年齢層で満席。しかし、それぞれの熱演ぶりに演奏中にも大きな拍手が起こり、演奏終了後には更に大きな拍手と、老若男女がこぞって彼らの音楽を満喫した。

 会場には上妻宏光、国本武春、木乃下真市、そして和太鼓のヒダノ修一など、既に第一線で活躍する演奏家が客席で応援。新進気鋭の出演者達にとっては大きな励みになったに違いない。(澤野)

『ミュージックトレード』10月号より